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 Blessing  〜白き欠片の精霊たちの〜

 12月23日 晴れ

今私と彼は高松に向かう新幹線の中にいる。
私が東京の大学に入学して高松に帰るのはこれが初めて。
ホントは夏休みにも帰省する予定だったけど
パパ達が軽井沢に避暑に来ていたから結局帰ることは無かったの。

「ねぇ真奈美?」
「はい。なんですか?」
「なんで僕たち新幹線に乗ってるんだろう?」
「えっ?高松に帰るからじゃないんですか?」
「飛行機ならものの3〜4時間で着くのに?」
「・・・確かにそうですけど・・・」
「もしかして飛行機という選択を忘れてた?」
「そっ、そんなことないですよ・・・」
「なんでどもるの?」
「そんな事無いですよ。
それに貴方はよく電車で高松まで来てくれたじゃないですか」
「あのときはお金もあんまり無かったし・・・」
「今だってそんなにお金があるわけじゃ・・・
それに去年まで貴方が見ていた風景を私も見てみたかったんです」
「ほんと?」
「ほんとです」
「ふ〜ん」

なんとか誤魔化せたみたいです。
確かに飛行機という選択肢を忘れていました。
けど今までなら高い空に居られる飛行機を忘れる事は無かったのに・・・
これも『真奈美は弱いままでも良いんだよ』って言う彼の言葉のせいかな?
ふふ、変われば変わるものですね。

「なにがおかしいの」
「いえ・・・ただ人って変わるものなんだなって思ったのでつい・・・」
「そうだね・・・けど去年の春に再会したときの真奈美は
あんまり変わってないって思ったけどね」
「私も・・・貴方は昔の・・・優しい貴方のままだなって思いました」
「そうかな?」
「はい、そうですよ」
「けど君は変わったよね?」
「えっ?」
「昔、いや去年よりもずっと・・・ずっと強くなった」
「そんなことありません」
「いや、この1年、ずっと真奈美を見ていた僕が言うんだから間違えないよ」
「ほんとですか・・・」
「え?」
「私をずっと見てたって・・・ほんとですか?」
「う・・・うん」
「う・・・嬉しいです・・・ぐすっ・・・」
「あぁぁっ!泣かないでよ真奈美」
「ごっ、ご・・めん・・なさい・・・けど・・・よくわからないけど・・・嬉しくて・・・」
「言ったろ?僕は真奈美を守るって」
「・・・はい」


 それから4時間後


「久しぶりだね、高松も」
「はい、そうですね」

あの後私が作ったお弁当を食べたり
お互いの大学(本当は同じ大学っだらよかったけど)について話したりしていたら
思ってた以上に早く高松に着いた。
彼は「やっぱり2人だと目的地に着くのも早く感じるな」
なんて言ってたけどどうなんだろ?

「真奈美、ここからどうするの?」
「一応パパが迎えに来てくれる事になってます」
「聞いてないよ、そんな事?」
「はい。言ってませんけど?」
「撲、真奈美のお父さんに会ったこと無いの知ってるよね?」
   一瞬、血の気が引きました。
「け・・・けど、ママには会ったことありますよね・・・・」
「声・・・震えてるよ?」 
「もしものときは、私のこと連れて逃げてくださいね(にっこり)」
「真奈美・・・なんか、たくましくなったね?」
「冗談ですよ。それに貴方の事はお話ぐらいお話ぐらいはしときましたから」
「なら大丈夫かな、けど服装ぐらいは考えたかったな」
「なんでですか?」
「真奈美をくださいって言ったときにすぐに返事がもらえるようにしたいからね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・っぽ。
自分でも顔が赤くなっていくのがわかります。
だって、それって、あの、えっと・・・・・・
ダメ〜恥ずかしくて彼の顔が見れない〜・・・
けど・・・彼はどんな顔をしてるんだろう・・・ちょっと・・・見てみたいかも



・・・・・・・・・・・・ものすごく真っ赤な顔してるし・・・・・・・



「ねぇ・・・真奈美・・・」
「はい・・なんですか・・・」
「東京に帰ったら・・・」
「はい・・・」
なんて・・・なんて言ってくれるんだろ・・・
「一緒に・・・暮らしてくれないか?」
「そっ、それって!」
「本当は結婚してくれって言いたいんだどまだ・・・ね。
けど・・・少しでも真奈美のそばに居たいから・・さ。だめ・・・かな?」
「そんな事無いです・・・けど・・・迷惑をかけることになっちゃいますよ?」
「構わないさ・・・真奈美が泣き出したら僕が君を慰めて
僕が無茶したら君が怒ってさ・・・そんな生活・・・してみたいんだ」
「そうですね・・・私もしてみたいです・・・そんな生活」
「けど変だね」
「何がですか?」
「まだ高松に来たばかりなのにもう東京に帰ったらって話をしてさ」
「そうですね・・・けど・・・今聞いてよかったです」
「?」
「パパやママ、それにオバさん達を説得しなくちゃいけないから」
私と彼。どちらも顔を見合わせて微笑む。
彼は「それが一番大変だね」って、だけど笑いながら
私を励ますように言ってくれる。
そして本当に自然に唇を交わす。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ちょっと寒くなってきましたね」
「そうだね・・・大丈夫?」
「はい・・・っあ!?」
「雪・・・」
白い結晶達が静かに降り始めた・・・
始めは少しの白が・・・数分も経たない内に町を埋め尽くす・・・・
「ピッチ達・・・大丈夫でしょうか・・・」
「大丈夫・・・きっと大丈夫だよ・・・」
「どうして・・・わかるんですか?」
彼は私の問いに答えずに私を少しだけ強く抱きしめる。
けど、私には彼の言いたい事がわからない・・・
「どうしたんですか?」
「・・・鳥達は自分の羽で、自分自身を暖めることが出来るんだよ」 
「・・・はい・・・」
「昔・・・君は翼が欲しいって言ってたよね?」
「はい・・・」
「僕じゃ・・・君の翼にはなれないかな?」
「・・・・・・はい・・・なれないです・・・・」
   だって・・・だって・・・あなたは!!
「貴方は・・・貴方には・・・私を守るだけの存在には
なってもらいたくないから!私にも・・・貴方に出来る事があるから!!」
「そうだったよね・・・ごめん」 
私にしては珍しいかもしれない。こんなに大きな声を出すなんて。
けど彼はさっきよりも優しく、そして、強く抱きしめてくれた。
「そうだよね・・・
これからは2人で生きていこうって僕が言ったんだよね・・・ごめん」
私は・・・何も言わずに彼に体を預けた。
新しい世界を望み始めた2人に送られる冷たい・・・
けどあたたかい雪の祝福を感じながら。

Fin

あとがき

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