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ピッピィッ

ふと、窓の外で小鳥の鳴き声がした。

真奈美
「あっ、ご、ごめんなさい。ご飯‥‥忘れてましたね」

真奈美は目に浮かぶ涙を拭いて台所へ向かっていった。

真奈美
「はぁーい。ご飯ですよ!」

杉原家の庭にあるバードフィーダーに鳥が集まる。

真奈美
「ふふふっ今日も元気そうね。」

真奈美は一匹一匹に話しかける。
話しかけられた鳥も
真奈美の言葉が分かるようで何かしらのアクションをとる。

真奈美は少年と別れてすぐ、大学に入学して、
サークルを作り自然保護に対するレポートを作成した。

その作成には2年という歳月を要した。
サークルの中には途中で挫折する者も多かった。
しかし、真奈美はやり続けた。
その理由のひとつに
あの少年とエアメールがあったことは言うまでもない。
少年の言った言葉に
「何かできることからはじめてみなよ‥‥」という物がある。
真奈美のまわりの自然が破壊されるのに責任を感じて
その少年に言ったときに言われた言葉だ。

そこで真奈美は人々に訴えるという形で自然保護をしようと考えたのだ。
そしてエアメールいつも最後に「がんばれ真奈美!」と書いてあった。
くじけそうなときにはその一言を見るようにしている。
そうすれば不思議と元気が出たから‥‥。

そして、真奈美が大学2年生を終えるとき
やっと、そのレポートを提出した。
今、そのレポートは自然保護に関する人々の中では静かな話題となっている。

真奈美
「あの人もここに来ては歓迎されてましたよね‥‥」

時々、小鳥たちの食事時間に少年が来ることがあった。
少年は真奈美を驚かすつもりだったのだろうが
少年の方が鳥たちに歓迎されてビックリしていた。

真奈美
「ふふふっ」

思い出し笑いをひとしきりしたあと、ふとある考えが浮かんだ。

真奈美
「これから長い夏休み‥‥‥
そうだ!あの人と一緒に行った場所を一人で行ってみよう!」

少年が訪ねてくるというエアメールをもらってから
真奈美は考えが大胆になっていた。
ただそこまで大胆な考えになったのはエアメールだけではない。

 

3週間前‥‥‥‥‥

裕子
「ねぇ、真奈美はどうするの?」

真奈美
「えっ?」

裕子と真奈美は大学入ってからの仲良しである。

裕子
「来年はもう4年生でしょ、
就職するのか院試を受けるのかはっきりしておかなきゃ」

真奈美
「私は‥‥‥」

どうするのだろう?
今まではあの少年と結ばれてお嫁さんになることを夢見ていたのだが、
実際はどうなるのだろう‥‥‥。
あの少年はもう自分のことを何とも思っていないのかもしれない。
不安感が胸を締め付ける。

裕子
「ちゃんと決めておかないと‥‥あとで後悔するよ!」

真奈美
「は、はい、そうですね。‥‥わかりました。」

裕子
「私はここ、高松に残って就職したいな。」

真奈美
「ど、どうしてですか?」

裕子
「街も山も海も都会にはない良さがあるから‥‥」

真奈美
「そうですよね!」

その一言に真奈美は嬉しくなった。

裕子
「まぁ、できればの話だけど」

真奈美
「大丈夫ですよ、裕子さんなら必ず‥‥」

裕子
「ありがとう!」

というやりとりがあった後、真奈美は自分の将来について考えるようになった。
しかし、真奈美の頭の中には少年と結婚する以外頭に浮かばなかった。
でも、もし駄目 だったらどうしよう‥‥
ふとそれが頭をよぎる度、真奈美は涙がこぼれてくるのだ。
だから今回は、自分の考えをはっきりさせるための行動であるかもしれない。

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