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真奈美
「はぁーい、朝御飯ですよー」

鳥が集まってくる。
真奈美のいつもの日課である。

真奈美
「今日も元気ね‥‥あれ、チッチちゃんは?」

真奈美は昔、少年と保護した鳥の子供にチッチちゃんという名前を付けた。
まず真っ先に寄ってくるチッチちゃんがいないのだ。

真奈美
「チッチちゃーん」

と呼んでも一向に出てくる気配がない。

真奈美
「?」

真奈美が不思議がっていると‥‥‥‥

真奈美
「あっ!」

チッチ
「ピッ」

真奈美の視線にチッチがとらえられた。
その横には‥‥

翔太
「おはよう、真奈美!」

真奈美
「翔太さん‥‥」

翔太
「ほらっ、ついたよ」

肩からチッチが飛び立ってえさの方に向かっていった。

翔太
「途中で一緒になってさ‥‥
 肩に止まっていたから一緒に来ちゃった‥‥。」

本来野鳥というのは警戒心が強いものである。
チッチはその中でも警戒心が強いというのに‥‥。

真奈美
「わかってたんですね‥‥‥」

翔太
「何を?」

不思議な顔をする翔太。

真奈美
「覚えてますよね‥‥ピッチちゃんのこと‥‥」

翔太
「僕らが保護した?」

真奈美
「はい。あの子、ピッチちゃんの子供なんです‥‥。」

翔太
「通りで‥‥似ていると思った‥‥。」

翔太は納得する。

真奈美
「気づいていたんですか?」

真奈美は驚いた。

翔太
「ううん。似ているなって思っただけ‥‥」

真奈美
「でも、覚えていてくれたなんて‥‥うれしいです。」

翔太
「真奈美との思い出だからね‥‥」

翔太は優しく微笑んだ。
真奈美は真っ赤になった。
これから自分の気持ちをいおうというときに‥‥。

翔太
「‥‥今日は、場所は真奈美が決めていいから
 ちょっと僕につきあってくれないかな?」

真奈美
「えっ?はい。それで、えっと、どういうところがいいんですか?」

真奈美はこの3年間裕子に振り回され続けて
高松の街なら多少は分かっている。
私の告白は今日の最後にしよう‥‥

翔太
「なるべく静かなところがいいんだけど‥‥人の多くない‥‥」

真奈美
「じゃあ、あそこに行きましょう!私たちの秘密の場所‥‥」

中学のときに案内したことのある真奈美のとっておきの場所‥‥
あそこなら山の中なので静かにお話しできる‥‥。

翔太
「うん。今日は暑いしね‥‥」

翔太は空を見上げた。
雲一つない・・澄み切った空‥‥
そういえばいったい翔太につきあうってなにをするのだろう‥‥。

 

 

真奈美
「うーん、いいきもち!」

真奈美が小川に足をつけている。
夏の暑さにはちょうど良い涼しさを水が運んできてくれるように思える‥‥。

真奈美
「どうしたんですか?」

翔太がまじめな顔をして立っている。

翔太
「ううん。なんでもない‥‥気持ちいいね、ここの水は‥‥いつ来ても‥‥」

真奈美
「そうですね。」

と真奈美は笑顔で答えたがやっぱり何かある‥‥
これだけは確信していた。

翔太
「‥‥ねぇ、真奈美はこれからどうするの?」

翔太は唐突にそんな質問をした。

真奈美
「えっ?」

翔太
「もう僕たちも3年生でしょ‥‥
だからもう大学卒業したときのことを訊いておこうかなと思って‥‥」

いきなり核心部分だ。
真奈美は焦った、言わなきゃ言わなきゃ、でもいきなりすぎて‥‥

真奈美
「まだ、決めていません。」

あぁ、言えなかった‥‥
でも、私からならちゃんと言える。今日の別れ際にでも‥‥。

翔太
「自然保護の方面に進むんじゃないの?」

翔太が驚く。

真奈美
「いえ、私、あまり、活発には活動できないから‥‥
個人でゆっくりとやっていこうと思ってます‥‥。」

翔太
「そうだったね。頑張ってね!」

真奈美
「はい!」

そう、あなたのこの一言があるから、私、頑張っていけたんです‥‥
何よりも勇気づけられる一言だったから‥‥

真奈美
「それで、あの、翔太君は‥‥」

翔太
「うん、それなんだけどね‥‥」

翔太が悩んでいたのはこのことだったのかもしれない。
だったら私でも相談に乗れるかもしれない‥‥。
そんな期待をしている真奈美の横で翔太は水から足をあげ気をつけの姿勢をとった。

翔太
「真奈美‥‥‥‥」

真奈美
「‥‥えっ?はい?」

翔太の顔が今までに見たことのないぐらいまじめだ。

翔太
「まじめに答えてね。
真奈美の本心、作った物じゃなくて本当の心で答えて欲しいんだ。」

明るい、優しい顔で翔太は言った。

真奈美
「はい。」

なんだろう‥‥そんなに重大なことなのかしら‥‥。

翔太
「真奈美、僕のことどう思ってる?」

真奈美
「はい?」

あまりにも突拍子もないことに真奈美は驚いた。

翔太
「真奈美は、僕のことどう思ってるのかなって思って‥‥
嫌いなら嫌いでいいよ。今の真奈美の心が聞きたいんだから。」

‥‥もちろん、それは‥‥。

真奈美
「私は、翔太君のことが‥‥好きです。」

真奈美は一瞬、吹っ切れた気がした。
今いわなきゃダメかもしれない。
また好きですと言えないかも‥‥
翔太君に好きな人ができて言えなくなるかもしれない‥‥。

翔太
「‥‥‥‥どのぐらい?どのぐらいだい?‥‥」

翔太は次の答えを求めた。

真奈美
「わ、私の、かけがえのない人として‥‥好きです。
 絶対に失いたくない‥‥できればずっとそばにいて欲しい‥‥そんな人です。」

翔太
「‥‥その言葉、信じていいの?」

翔太がポカンとしている。
真奈美には考えられないような強い一言だった。

真奈美
「はい!これが私の今の気持ちです。」

じゃあ、あなたは‥‥
私のことをどう思ってますか?

この答えですべてが決まる。悪い返事は聞きたくない。
けれど、聞かなければ前に進めない‥‥・。
そして真奈美が口を開きかけたその時‥‥‥

翔太
「真奈美、僕も好きだよ、真奈美のことが‥‥
最初は妹のように思っていた。
‥‥僕にとってはとてもかわいい妹だった。
けど、3年前、真奈美と別れる直前に気づいたんだ。
真奈美は僕の妹じゃない。僕の好きな、大切な人なんだって‥‥」

真奈美
「‥‥‥‥」

翔太
「だから、一番大切な人にさよならをいいたくて‥‥‥
 その時に好きだっていいたくて関空までいったんだ。
 けど、言えなかった‥‥。
 言っていいえといわれるのが怖かったんだ。
 それからあっちでもずっと真奈美のことを考えていた‥‥
 もしかしたらもう他の男の子とつきあっちゃったかもとか‥‥
 真奈美は僕のものじゃないのにね。
 そして、真奈美の手紙が来る度にうれしかった
 勇気づけられた、何でも乗り越えられた‥‥
 ごめんね、実は僕なんてこんな人だったんだよ。
 告白する勇気もない、わがままな‥‥」

真奈美
「そんな、違います!あなたは‥‥」

翔太
「ううん、僕はこんな男だったんだよ。
 ‥‥でも、真奈美となら‥‥
 僕に勇気をくれた真奈美
 大切な人としての真奈美‥‥
 真奈美とならどんなことでも乗り越えられる
 そして真奈美のことを絶対に大切にできる‥‥。」

も‥‥もしかして‥‥

真奈美の胸が高鳴る、翔太にも聞こえそうなほど‥‥‥‥。

翔太
「真奈美、僕が迎えに来るまで待っててくれないかな?」

真奈美
「それって‥‥‥‥」

翔太
「俗に言うプロポーズ‥‥かな?」

翔太が照れ笑いをする。
そんなことでさえ今の真奈美には大切なこと、特別なことに思えてくる。

真奈美
「う、うれしいです。
私‥‥いつもあなたと結ばれることだけを夢見てました。
だから‥‥だから‥‥」

真奈美が涙を流している。
そのせいで声が出ない‥‥。

翔太
「大丈夫!真奈美の言いたいことは分かってるから‥‥」

翔太はそっと真奈美の肩を引き寄せた。

翔太
「OKなんだね‥‥」

真奈美
「はい」

真奈美は小さくうなずいて

真奈美
「こんな私で良ければ‥‥」

とそっと言った。

翔太
「‥‥良かった‥‥約束だよ」

真奈美
「はい、約束します。‥‥ずっと離さないでくださいね‥‥」

 

 

その後、日が暮れても真奈美と翔太は寄り添い、今度は2人で星を見ていた。

あたたかい‥‥

星の光がまるで祝福しているかのように自分たちを照らしている。

翔太
「僕ね、数々の転校を体験したよ。
‥‥途中でいやになったこともあった。
でも、今となってはこの転校生活にも感謝しなきゃね。
真奈美と知り合えたから‥‥。」

真奈美
「2人が出会えたことを神様と翔太君のお父さんに感謝しなきゃいけませんね!」

翔太
「そうだね‥‥ははは、僕の親父と神様が同じ位置にいちゃまずいよ」

真奈美
「そうですね!ふふふ‥‥」

翔太・真奈美
「ははは!」

電灯も何もない‥‥
月明かりだけのはずなのに2人のまわりだけは明るく見えた。
そして、2人もお互いの顔を完全に見ることができた。
2人の顔は今目の前に見える蠍座よりも赤く輝いていたのかもしれない‥‥。

 

 

しかし翔太にはやり残したことがあった。
そう、今までつきあってきた11人の女の子との関係にけじめをつけなくてはならない。
今は真奈美の婚約者になったのだから‥‥。

 

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