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それから何日かで真奈美は亮太と2人で高松を歩き回った。
小豆島に屋島、女木島、栗林公園など‥‥。
その小さな旅の所々で真奈美は高校三年のときに別れた少年の話をした。
そこまで打ち解けるようになったのだ。
話をしてまた景色を目にうつす度、真奈美の中には懐かしさがこみ上げてきた。
確かめるように、じっくりと‥‥そして確実に。

やっぱり私、あなたのことを忘れられないみたいです‥‥‥

少年と歩いているうちに真奈美の心にひとつのおおまかな結論が出た。

真奈美
「きれい‥‥」

亮太
「‥‥そうですね。」

真奈美の家に帰る途中、山への道の途中で真奈美は夕日を見た。
その夕日はきれいだった。
太陽も真奈美の結論を喜んでいるのかもしれない‥‥。

真奈美
「一応の観光名所巡りはこれで終わりですね‥‥」

亮太
「ありがとうございました。」

亮太は少しさびしそうに頭を下げた。
あまりに浮かない顔をしているので真奈美は心配になって聞いてみた。

真奈美
「あっ、どうしたんですか?」

亮太
「えっ?‥‥何でもないです‥‥。」

プルルルル プルルルル‥‥‥‥

陽気に電話が鳴っている。
洋子は手が放せないようなので真奈美が自分から電話に出た。
楽しい電話なら大歓迎だ‥‥。

真奈美
「はい、もしもし杉原です。
えっ、えっ、あ、あのどちら様でしょうか?
あ、あなたですか?‥‥‥‥‥‥‥‥‥はい、元気でした。
うれしい‥‥‥‥えっ、高松に来られるんですか?
うれしい‥‥私、待ってますね。えっと日曜日ですか?‥‥はい!大丈夫です!
じゃあ、10:00に高松駅に‥‥えっ?家まで来てくれるんですか?‥‥でも‥‥
は、はい分かりました。じゃあ‥‥待ってますね!はい!」

ガチャン

真奈美
「ふぅー」

真奈美はどこかでため息が聞こえた気がした‥‥。
それを気にすることができないほど舞い上がっていたが‥‥。

 

 

その夜‥‥

コンコン‥‥‥

真奈美の部屋のドアがたたかれた。

真奈美
「はい?」

静かにクラシックを聴いていた真奈美はドアの方に歩いていった。

ガチャ‥‥‥

真奈美
「りょ、亮太君?」

亮太
「‥‥‥‥どうもありがとうございました。」

亮太は静かに頭を下げた。

真奈美
「えっ?」

亮太
「もう、僕、帰らなくてはいけません。学校が‥‥‥‥
長い間ありがとうございました。」

真奈美
「‥‥‥‥そうですか。」

突然の別れに真奈美は驚いた。
どうして自分の前から人は風のように去っていくのだろう‥‥。
あの少年だって‥‥。

亮太
「じ、実は、お礼を言いにいただけではないんです。」

一瞬の沈黙のあと唐突に切り出した。

真奈美
「えっ?」

亮太
「‥‥僕、真奈美さんのことが好きです。
ただ、ぶつかっただけの僕を‥‥‥‥一緒に旅までしてくれて‥‥」

亮太は声を詰まらせているためになかなか聞き取れなかったが、
真奈美には気持ちが読みとれた。

亮太
「で、でも‥‥」

亮太は廊下から星を見た。
今夜の高松の星もきれいだ。
ただ、星の光は亮太と真奈美を貫くような、冷たく透き通った光だった。

亮太
「‥‥かなわない恋なんですよね。
真奈美さんにはもう好きな人がいる、もうすぐ帰ってくる人が‥‥‥‥」

亮太はここで嘘をついている。
亮太の学校はまだまだ夏休みはあけないのだが‥‥。
真奈美から少年の話を聞いてから決めていた、
その少年が来る前にはここから離れようと‥‥
なのに、亮太は真奈美を好きになってしまった。
自分で止められないほど‥‥
だから、分かっていても来てしまった。

真奈美
「‥‥‥‥」

亮太
「あっ、今の話は聞き流してください。
ただ、僕の気持ちだけは話しておかないと後悔しそうだったんで‥‥‥‥
あとに引きずるようなことを言ってすいません。」

亮太は泣くのを必死にこらえていた。
しかし、やはり涙が‥‥
亮太はその涙を見せないように真奈美に背を向けた。

真奈美
「‥‥」

亮太
「‥‥‥‥日曜日‥‥3日後に帰って来るんですね‥‥。
今度はちゃんと伝えてみてくださいね。
真奈美さんがその人を好きだということを‥‥。
そうすれば絶対、道は開けるはずですよ‥‥
こんなに真奈美さんがその人のことを思っているんだから届きますよ、
真奈美さんの思い‥‥‥‥僕も届くことを遠くで願ってますね。
‥‥じゃあ、長い間お世話になりました。そして、ありがとうございました!」

亮太らしく一礼して自分の部屋に戻っていった。

真奈美
「‥‥‥‥ありがとうございます。
そして、‥‥ごめんなさい。私、やっぱりあの人が好きです‥‥。」

真奈美のコンポはいつの間にか結婚行進曲が流れていた。

 

 

亮太
「じゃあ、どうもありがとうございました」

真奈美
「ま、また高松に来ることがあったら寄ってくださいね。」

亮太
「はい!是非‥‥」

「マリンライナー岡山行き間もなく発車いたします。」

亮太
「それでは!」

真奈美
「さようなら!」

そこで駆け込むひとつの影、
その人に押されてしまい真奈美もマリンライナーへ‥‥

真奈美
「‥‥‥‥」

亮太
「坂出まで一緒ですね」

亮太が笑いながら真奈美を見る。

真奈美
「そうですね!」

真奈美もつられて笑ってしまう。

「‥‥亮太君?」

真奈美を乗車させた張本人が亮太に話しかけた。

亮太
「えっ?」


「私だよ。有紀!」

帽子をはずすともう一人の真奈美が‥‥いや、有紀がいた。

亮太
「ゆ、有紀ちゃん?」

亮太も真奈美もあっけにとられている。

有紀
「うん。」

亮太
「また‥‥あえたね。」

有紀
「‥‥うん。」

年齢は真奈美の3つ下くらいだろうか。
ただ、真奈美よりも背が高く健康的なイメージを受けたが‥‥。

アナウンス
「坂出、坂出に到着です。お降りの方は忘れ物など‥‥‥‥」

真奈美は静かに駅に降りた。
再会した2人のカップルの邪魔をしないように‥‥‥‥。

 

 

電車が出たあと

真奈美
「さてと‥‥私ももうすぐあの人が帰ってくるんですね。‥‥がんばろっと!」

真奈美は小さくジャンプするように歩いて帰った。
今の気持ちを表すかのような歩きだった。

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